2035年には3人に1人が高齢者となる我が国において、要介護・要支援者は約900万人に増加することが予測されており※1、今後、医療費負担の増加や将来世代への社会保障費の負担が深刻化してまいります。また、介護業界は他の業界と比べ、依然として給与水準が低いのが実情であり、2040年には約57万人の介護人材が不足するとされ※2、施設介護や介護サービスの提供が困難になっていくことが懸念されています。
こうした課題に対してヤマシタのホームケア事業では、介護用品のレンタルを通じて、高齢者が住み慣れた在宅環境で自立した生活を過ごすお手伝いをしています。介護用品のサービスは、在宅介護の給付費全体の中でわずか8.3%でありながら、在宅介護サービスを受けている方の7割近くが利用している重要な社会インフラです※3。高齢者が介護用品を使い、ご自身の力で豊かな生活を過ごせるようになることは、QOLの向上だけでなく、介護業界の人手不足解消・将来世代への財負担抑制にもつながり、この事業を成長させることは大きな社会貢献になると確信しています。
ヤマシタは、介護用品レンタルサービスを軸に、在宅介護における様々なニーズに対し、テクノロジーを活用したソリューションを提供する在宅介護プラットフォーマーへの変革にもチャレンジしています。
在宅介護プラットフォーマーへの変革の基盤として、以下のようなDX推進の取り組みを行っています。これらの取り組みを通じて、私たちは介護の現場とテクノロジーの橋渡し役となり、利用者・家族・介護従事者のすべてに新しい価値を届けることを実現を目指します。
新たなITサービス創出や社内システム構築の内製化に取り組んでおり、エンジニアの採用を積極化しています。2025年度にデジタル本部を新設し、2027年末までに50名規模のエンジニア組織を構築する予定です。筑波大学准教授・メディアアーティストの落合陽一氏、日本ケンタッキー・フライド・チキン常務執行役員 CDTO の池照直樹氏、タイミー CTO の山口徹氏をアドバイザーに迎え、業界を横断した知見で新規サービスと社内システムの内製化を加速させます。
Microsoft Power Platform や Dify を活用し、現場を熟知した非エンジニア社員が自ら業務アプリやAI機能を開発できる環境を整備しています。2024年度にはアイデアソン・ハッカソン研修を計4回開催し、70名超が参加、70以上のアプリを生み出しました。現場発のDXが、組織に自律的な変革サイクルをもたらしています。
AIエージェント時代を見据え、「AIを活用したプロコード開発」と「非エンジニア社員のAI開発と活用」に取り組んでいます。
「AIを活用したプロコード開発」では、基幹システムの刷新に合わせて、マイクロサービス化とMCPサーバーの組み合わせによるAI連携を前提としたアーキテクチャへの再構築を進めています。また、プロコード開発では生成AIツールを活用し、開発生産性を大幅に向上させています。
「非エンジニア社員のAI開発と活用」では、ローコード/ノーコード開発者向けにAIチャットボット開発ツール(Dify)を提供すると共に、業務ナレッジを整備してAIを育てるAIトレーナーの育成も開始しました。
ヤマシタでは、社会性の高い事業を通じて地域や社会、また業界の発展に貢献しています。具体的には、介護用品の使い方を広める活動や公的機関を含むさまざまな団体とのタイアップによる介護イベントの実施、また将来世代への教育支援などを行っています。
東京都大田区・中央区・世田谷区、神奈川県相模原市、静岡県焼津市・島田市、栃木県宇都宮市・足利市、三重県亀山市の小・中学校・高校では、ヤマシタの社員が講師となり介護用品やリネンサプライの職業体験会などを行っています。
内容としては、介護用品勉強会、車いす体験会、夏休みを利用しての施設でのボランティア活動、洗浄センター見学などを毎年定期的に開催しています。実際に介護用品を使ってみることで、操作の難しさや平坦でない道を歩く際は周囲のサポートが必要であることなど、環境配慮の重要性を経験として知ることができます。
参加者アンケートでは「日常生活の中で介護用品のご利用者を見かけた際には自分がぜひ助けたい」という前向きな感想も多く頂いています。リネンサプライの工場では、職業体験として特別支援学校の生徒の受け入れを行っています。
東京都江戸川区「リウマチ友の会」では、自助具の研究紹介などの活動に協力しています。愛知名古屋市・小牧市の「介護フェア」では、地域住民に対して介護体験などを行っています。一宮市では、委託事業である介護連携推進事業に協力しています。岐阜県岐阜市地域包括支援センターの依頼に基づき「認知症おでかけサポート訓練」に協力しています。東京都港区地域福祉フォーラムで介護などに関して各種専門家に気軽に相談できるコーナーで介護用品の展示に協力しています。茨木県水戸市高齢者支援センターからの要請により、認知症による徘徊捜査協力事業所として登録、徘徊者情報をメールで受け取り、情報提供することで捜査に協力しています。埼玉県さいたま市大宮区開催の「ますます元気教室」においていきいき元気アップ体操の場所提供をしています。